▼伎楽面獅子の制作進捗2020/07/28 08:39 (C) 獅子宿燻亭8
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昭和47年発行「宮内庁蔵版 正倉院事務所編集 正倉院の伎楽面」の写真資料を元に獅子頭を制作して
いる。
その数点ある獅子の代表的な作である師子面(木彫128号)を選定し、限られた写真と図面を参考に制作
した。いつもの一木造りでは無く、あえて寄木造りの試作で写真や図面の二次元から三次元を読み取る模
刻の訓練でもある。また写真図面からは寸法などの数値を確認出来ないので想像力を鍛える試みでもある。
ある程度、形になったが改めて写真と比較すると、誤差が著しい。
伎楽で用いられた伎楽面とは呉舞(くれのまい)と呼ばれ、中国南部の呉の国で行われた古代舞楽の一つ
である。伎楽は推古天皇の二十年(612)、百済の帰化人 味摩之によって日本に伝えられたといわれる。
仏教の興隆と共に栄え、飛鳥・奈良時代に大いに盛行したが、その後急速に衰退し現在は廃絶した文化で
ある。
図版には師子面と人物面が数百あり膨大な資料量を窺わせる。いずれの面も優れた技量と造形力の作ばか
りで、おそらく何代にもわたる中国の彫り師達の作品だろうか?
その中でも、師子面128号は素晴らしい。その造形力は1400年を経ても色褪せず輝いている作品で、現代
にその片鱗を残している。
この師子面128号の目や耳、頭部の隆起した部分や舌や歯の表現などが近代の獅子頭に似通った要素が感じ
られ、いかに影響力を及ぼしたかが分かる。
この師子面128号の眉の表現は西欧的で、いかにも百獣の王ライオンを彷彿とさせる造形表現で、耳の内部
の体毛を感じさせる表現も独特である。鼻の穴がハート型に彫られている所はリアリティーを感じさせられ
るところである。
置賜や獅子宿コレクションの獅子頭で部分的に似通っている点を挙げてみねと・・
目尻・・宮内熊野神社の獅子頭
歯・・・川西町堀金 證誠寺蔵の獅子頭
ハート型鼻の穴・・明治期の小関久蔵の作の獅子頭
耳・・・獅子宿コレクションの寒河江平塩の小獅子の耳に見られる表現
頭頂部の隆起・・名古屋型の獅子や伊勢太神楽型の獅子頭
前歯の鉄板・・庄内酒田系の獅子頭
歯茎・・白鷹町浅立、広野、小山沢の師子頭
今回、頭部を5つのパーツに分けて制作してみて感じたことは、一木造りと比較して内部をくり抜く加工がや
り易い事が一番だろう。継ぎ目が出るので強度的には弱くなり軽量化を要する獅子頭には向いているが、歯打
ちや強度を要する獅子には不向きである。
日本に現存する師子頭は、これらの正倉院の師子面を元に作られ全国に伝播し、またそれらを元に制作され現
代まで伝承されているのだろう。