▼獅子彫り三昧の日々2020/06/18 05:40 (C) 獅子宿燻亭8
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道の駅米沢の展示開始後から約10日の間、獅子頭の柳の原木を木取りと荒彫りを行なっている。
爽やかな快晴が続き、日差しも初夏の肌を刺す強さに変化してきた。
今年の冬は雪が無く梅雨は空梅雨と、このままでいけば水源枯渇?新型コロナ禍の長期化も合間って心配は
事足りない。そんな心配を掻き消すように、店の東側に安置した丸太を捌いている。
乾燥材の柳
荒彫り
個人依頼の獅子を2頭分と神社から依頼の獅子1頭分と顎1を取り掛かった。個人用の獅子は乾燥した柳材と
生の原木から荒彫りまで済ませた。何故こんなに急ぐかというと原木柳から青々とした葉が生い茂ってきた
事と、梅雨入りを前に早く加工したいという思惑である。
獅子の寸法に合わせ、丸太切りした木口は乾燥ヒビが入り、虫やカビが入りやすくなり、室内に入れて管理
しても、この季節はどうしてもカビが生えてしまう。場所も限られるので、なるべくギリギリの寸法に加工
し保管しなくてはならないのだ。
そんな中、突然獅子彫に興味を持った青年が現れた。と言っても仕事として獅子頭制作を目指す段階ではま
だ無く物作りとして獅子彫りに興味があるという。その時は、そば打ちの最中で店内を案内し獅子頭をご覧に
入れ、日を改めて今回の木取りの体験をお誘いした。彼は既に1作目の獅子頭を独学で制作していて、写真を拝
見すると一作目とは思われない仕上がりの出来具合である。自分の一作目より格段良い。
しかし、写真をよく見ると額のコブ(白毫)に芯がある。ということは普通、獅子の顔の正面に木口を向ける
が、木口は獅子の上に向けて取った事になる。
しかも、獅子頭の材料は硬く加工が困難なブナ材の丸太だった。ブナ材は椅子や床材、家具などに用いられる
材で、獅子頭には不向きの材である。よくぞ、この材で獅子頭彫りに挑戦したなと感心しきりである。やはり
芯から大きなヒビが見られ、パテで補修されているが、また隙間が出ている。顎の制作方法も驚きの手法で仕
上げた。チェーンソーを駆使するのでは無く、研磨用の高速で回転するグラインダーで、硬いブナを少しづつ
削ったのだという。いかに危険で恐怖を伴い大変な作業かは、経験者にしか実感は沸かないだろう。指の先数
センチ先で高速の荒いヤスリが回転しているのである。
そのチャレンジ精神に敬服し、彼の休みの日の晴れ間を狙って本格極太丸太切りを体験することになった。
すると60cmバーの重量級のチェーンソーも臆することなく操る。
自分は獅子彫りを30歳を過ぎてから始めたが、青年は20代と若く未来はこれからである。この段階で、私が
学んできた獅子彫りの精神や技術を身につけたらと考えると、素晴らしい獅子頭が産まれるのではないか?
江戸時代のような師弟制度で技術の伝承は不可能だが、獅子彫りの魅力に目覚めた方は老若男女問わず、獅子
宿の門を叩いて欲しい。挑戦者には微力ながら、お手伝いや協力を惜しまないつもりでいる。