▼燃えた獅子頭の謎2020/04/01 09:55 (C) 獅子宿燻亭8
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総宮神社略誌によると、その昔総宮神社の初代の獅子頭は老朽し石棺に入れられ埋葬されたという。
初代の獅子は今でも神社の重要な所に埋葬されていると推測している。二代目の獅子も老朽し寛文11年
(1671)に改めて新調されたとある。寛文11年の獅子頭が三代目であれば二代目の獅子頭がある筈であ
る。確かに総宮神社略誌に代々の獅子頭の記述があり、羽黒の僧 運慶の作の獅子頭があるとされてい
る。しかし、それに当たる獅子頭は神社には所蔵されていない。
以前ブログでご紹介した総宮神社の獅子頭役を明治大正昭和初期と務めた斎藤輿次兵衛氏は長井市新町
にご子孫も存在している。斎藤輿次兵衛氏は地域の名士であり、神社の獅子舞を統括し獅子舞の名手で
もあり、指導者でもあった。その御子孫の方から朝一番、メールの連絡をいただいた。
神棚の奥から焼け焦げた獅子頭の顎が出てきたのだという。早速、ご連絡し、お宅に駆け付けたのは言
うまでもない。
新聞紙に包まれ、真っ黒に焼け焦げ、はっきりと分断した三分の一の部分で、軸穴に木札が針金で取り
付けられている。右の三分の二との継ぎ目にアリ継の様な溝があり、亀裂を修理した部分から欠損した
可能性がある。木札には斎藤與次兵衛氏の但し書きが墨でこう書かれてあった。
「明治38年5月20日午前一時頃 隣家井上太市より発火 拙者土蔵類 焼ノ降 消失致した獅子で御座候也
斎藤輿次兵衛」とある。
隣家から出火し斎藤家の土蔵などに延焼し獅子頭が消失してしまったという意だろう。
獅子頭の由来は残念ながら書かれていないが、所有している獅子頭が焼失してしまうという災難はどんな
にショックであろう心中を察するものがある。
その消失した獅子頭がどんな獅子頭だったかは、この焼けただれた獅子頭の部分だけが唯一物語る事が出
来る。そして神棚に、まだ未調査の古文書があると聞くので、與次兵衛さんの残した遺物の謎が解明出来
るかも知れないという一筋の希望の光がある。
そして、その焼け焦げた顎の部分を拝見していると幾分小さい事に気付いた。燃焼中に収縮した可能性も
あるが、測ってみると長さ31cmである。
総宮神社略史には獅子頭について「獅子頭ヲ蛇頭ト称シ木製ニテ一尺四面」とあり、一尺は30.3cm。現在
の獅子頭より体格に合わせてか少し小さい獅子頭だったのだろう。